せっかく期待に胸をふくらませて入職したのに、職場でパワハラに苦しむ新人看護師は多くいます。先輩看護師やプリセプター、師長などに暴言を吐かれたり嫌がらせをされて、仕事に行けなくなるほど苦しんだり、「辞めたい」と思うこともあるでしょう。
医療現場ではインシデントやアクシデントを起こさないように、新人看護師にはときに厳しく指導することも必要です。しかし、指導・教育の範囲を超えて、精神的・身体的な苦痛を与える行為はパワハラにあたります。
パワハラを受けていると感じたら、まずパワハラ行為を記録するようにします。いちいち記録するのは手間ですが、記録があると事実確認のときに証拠として有効です。
もくじ
新人看護師へのパワハラ
出典:医労連『看護職員の労働実態調査結果報告書』
看護師の約3割が、パワハラと感じる行為を受けたことがあると回答しています。そのうち、新人看護師(20~24歳)が受けたパワハラの77.7%は看護部の上司からのパワハラであると回答しています。
新人看護師へのパワハラについては、ウェブの掲示板でも苦しむ声が多く見られます。読んでいると胸が痛くなるものばかりです。上長のほか、先輩看護師やプリセプターが新人看護師を苦しめていました。
先輩看護師によるパワハラ
新人看護師です。先輩看護師から威圧的に怒鳴られたり、指導ではなくていじめだと私は感じてます。他の同期は全くその人からの被害には合っていなくて私にだけです。友達に相談したらそれパワハラにならない?と言われました。正直、その人の声がしただけで心臓がバクバクなって冷や汗がでます。
先輩看護師から威圧的に怒鳴られる状況がくり返されているなら、それは先輩看護師によるパワハラです。
「威圧的」というのが問題です。先輩であるという立場を利用できるから、新人看護師に威圧的な態度を取れるわけです。これでは新人看護師が萎縮してしまい、平常心で業務にあたれなくなってしまいます。
プリセプターによるパワハラ
私は新人でありながらパートで看護師をしているものです。私は要領が悪くなかなか上手く行かないことが多く、同じ病棟に配属された同期のプリセプターに「あんたなんか要らない。仕事止めなさい。消えて」「新人のくせになんで昼休憩とってんの」、「あんたは狂ってる」と毎日のように言われてきました。もちろん上司にも相談しましたが改善されず、トップの看護部長さんにも相談しましたが流されてしまいました。(ちなみに、同期も体調を崩して私よりも早くに辞めています。)
プリセプターによる暴言がくり返されています。「要らない」「消えて」「狂ってる」という言葉は、業務とまったく関係がありません。本人を不用意に傷つける言動は、決してあってはならないもの。
さらに悪いのは、上司や看護部長が聞き流していること。すでに体調を崩して辞めている新人看護師も出ているのに、部署・病棟でパワハラ対策を講じないのは、すでにプリセプターシップが機能していない状態です。
新人看護師です。入職して2ヶ月経ちましたが、今日、仮病で休んでしまいました。今年中に転職を考えています。うちはプリセプター制度ですが、プリセプターのパワハラが辛く。と言ってもプリセプターは月2回程しか付かないので、日替わりでフォローが付いてくれるのですが、新人教育の目標が無くバラバラなので、久々にプリセプターが付く日は新人の出来なさ振りに苛立ってる状態。プリセプターが付く日は、業務後1〜2時間の説教?がありメンタル面で辛くなってます。そんな状態で1年間頑張るなら、思い切って転職をしようと思うのですが同じ事を繰り返したくないのです。
プリセプターが月2回しか付かないのがプリセプターシップと言えるのか。教育目標が無く、先輩看護師に日替わりでフォローされても、あの先輩の説明とこの先輩の説明で困惑しながら勤務することになりそうです。
この状況で1年目を乗り切るのは厳しいかもしれません。月2回、プリセプター面で説教されたところで看護技術は育たないでしょう。一度、医療系の求人サイトを見てみると、ほかの病院・施設の職場環境や教育体制がわかります。今の職場より良さそうなところがあれば、転職に動くのが良さそうです。
新人看護師です。プリセプターの人が怖く、自尊心を傷つけられ、脅すような事ばかり言われるので職場に行くのが怖いです。入職後2ヶ月で、辞めたいと思うなんて思ってもみませんでした。看護師になるぞ!と期待に胸を膨らませていた自分が、ガラガラと崩れおちていく気持ちです。もうずっと、下痢と動悸が続いています。
自尊心を傷つけたり、脅すような言動があった場合は、あきらかに指導の範囲を超えたパワハラです。このケースでは、新人看護師が職場に行けないほどの恐怖を感じています。
プリセプティが声をかけにくい雰囲気ができてしまうとインシデントやアクシデントのリスクを高めることを病院側で考慮できていないなら、医療施設として失格と言えます。
上長(主任や師長)によるパワハラ
社会人から新人看護師です。師長の言動が許せません。パワハラで訴えたいです。鈍臭い性格があるのはわかりますが、師長から度々「そんなことアホでもできる」「なんで看護師になったん?素質ないわ」「発達障害あるんじゃないか?」こんなこと言われます。一年我慢しましたが限界です。精神的にもまいっています。
こともあろうに師長の立場にある人が、新人看護師に暴言を吐いています。「アホ」「発達障害」などの言動は、まず人として許されるものではありません。
本来なら師長は、新人看護師やプリセプターをメンターとして見守る立場であるべきです。その役割を担わず、上の立場を背景にして新人看護師を苦しめるなど、常識では考えられないパワハラ行為です。
なにがパワハラになるのか
パワハラの定義
職務上の地位の優位性を背景に、業務の適性な範囲を超えて精神的・身体的苦痛をあたえる行為。先輩看護師や上長(主任や師長)による暴力・暴言・嫌がらせなど。
- 暴力:殴る、蹴る。髪や胸ぐらを掴む。物を投げつける。
- 暴言:必要以上に大声で怒鳴る。バカにする。人格否定する。脅す。
- 嫌がらせ:本人の能力では遂行できない過大な要求をする。能力を過小評価する。
パワハラは、新人看護師より立場が上の人から受けるハラスメントのことです。立場が上であることをパワー(権力)として振りかざすことがパワーハラスメントにあたります。
新人看護師の同期など、同じ立場の人から嫌がらせされてもパワー(権力)が働いていないため、パワハラとは言いません。つまり、看護の職場では上長や先輩からのハラスメントがパワハラになります。
職場で暴力を振るわれるケースはさすがに少ないでしょう。多くは暴言や嫌がらせになります。ウェブで散見されるパワハラのほとんどが、暴言や嫌がらせです。
新人看護師の場合は、プリセプターによるパワハラも目立ちます。指導・教育する立場であることに優越感を覚え、暴言を吐いたり、嫌がらせをするプリセプターだった場合は、その病院のプリセプターシップ自体が未熟である可能性が高いでしょう。
パワハラに取るべき行動
- 記録する:いつ(日時)・誰に・どのようなパワハラをされたのか、メモするか録音する。
- 相談する:上長に相談する。パワハラが上長によるものなら、看護部(部長など)に相談する。
- 退職・転職する:パワハラが横行するような職場で働きつづけるよりも、笑顔で働ける職場に移る。
記録する
- 録音は証拠として有効。録音のタイミングが難しければ、メモでも良い。
- 日時・人物の名前・パワハラ行為を記録に残す。
パワハラと受け取れる行為がつづいている場合は、録音やメモで記録しておきます。いつ(日時)・誰に・どのようなパワハラ行為(言動)をされたのかを残しておくと、相談での事実確認のときに証明できます。
録音のタイミングが難しければ、メモでも構いません。いつも持ち歩いているメモ帳に、日時・人物の名前・パワハラ行為をメモしておくと良いでしょう。
相談する
- パワハラが先輩看護師やプリセプターによるものなら、上長に相談する。
- パワハラが上長によるものなら、看護部(部長など)に相談する。
- 病院・施設に相談できなければ、労働局の総合労働相談コーナーに相談する。
パワハラの相談は、パワハラをする人物の上長にあたる人に相談するのが適切です。ただ、パワハラが上長によるものなら、看護部などさらに上の組織の上長に相談することになります。
パワハラを相談するということは、パワハラをする人物が調査されることになるため、その人と今の関係ではいられなくなることを覚悟するべきです。逆恨みされてパワハラがエスカレートしたり、ほかの看護師を巻き込んで嫌がらせをされるかもしれません。
病院・施設に相談できない、または相談する部門が無い場合は、労働局の「総合労働相談コーナー」で相談できます。
転職・退職する
- パワハラが見過ごされるほど、新人へのサポート体制が整っていない。
- パワハラに耐えてまで、そこで働きつづけることが自分にとって望ましいのかをよく考えるべき。
- パワハラに萎縮してしまい平常心で業務ができない状態では、インシデントやアクシデントにつながるリスクがある。
- 身体を壊してしまっては意味がない。
パワハラが横行する施設で無理に続けるのは賢明ではありません。新人看護師への指導・教育の目処は1年間になりますが、乗り切ってもその施設で働きつづけることになります。
それが、自分にとって理想的な働きかたなのかをよく考えたほうが良いでしょう。パワハラが見過ごされる職場は、すでに新人看護師が何人も辞めている職場かもしれません。
もし、同期の新人看護師がパワハラで辞めることになった場合、一方で我慢して残っていると人員が足りなくなってどんどん辞めにくくなります。ヤバい職場を辞めるなら「我先に」が鉄則です。
パワハラの裏にある問題
- 悪口・嫌がらせなどが常態化しているほど、職場環境が悪化している。
- 医師がパワハラ気質であり、医師に気に入られた看護師もパワハラをしている。
- 新人看護師が入ってもどんどん辞めていくため、看護師が高齢化している。
- 部署全体でプリセプターシップが機能していないため、新人教育がずさん。
パワハラをするような看護師がいる施設は、何らかの問題を抱えていると見てよいでしょう。看護師同士が陰口を言うのをよく見るなら、例外なく自分の悪口も言われています。
クリニックなど医師が直接の上長になる職場では、医師のパワハラや、医師に気に入られて長く務めている看護師がパワハラをおこなうケースがあります。看護師が入ってもすぐに辞めていくようなら、新人看護師がつづけるのは難しいかもしれません。
新人看護師がつづけられないような職場では、看護師が高齢化しています。古い施設ではありがちです。やり方も人それぞれでルールがなく、パソコンスキルがないためマニュアルを作っていないことが多いです。
プリセプターシップは現在、病棟・部署全体で新人看護師をサポートする体制に発展しています。プリセプターがパワハラをする場合は、新人看護師の指導を先輩看護師に押し付けて丸投げし、プリセプター自身もストレスを抱えるような、サポート体制を作る気がない病院と言えます。
苦しみながら働くよりも、早めに良い環境に移ることを考えたほうが良いです。
まとめ
- パワハラの定義:職務上の地位の優位性を背景に、業務の適性な範囲を超えて精神的・身体的苦痛をあたえる行為。先輩看護師や上長(主任や師長)による暴力・暴言・嫌がらせなど。
- 新人看護師(20~24歳)が受けたパワハラの77.7%は看護部の上司からのパワハラであると回答している。
- 職場で暴力を振るわれるケースはさすがに少ない。多くは暴言や嫌がらせ。新人看護師の場合は、プリセプターによるパワハラも目立つ。
- もし、同期の新人看護師がパワハラで辞めることになった場合、一方で我慢して残っていると実はどんどん辞めにくくなる。ヤバい職場を辞めるなら「我先に」。
- 自分の職場がヤバいかどうかは、看護師の求人サイトで求人を見てみると判断材料になる。ほかの病院・施設の求人情報に職場環境や教育体制が書かれているので、それが良し悪しの判断材料にもなる。